文化財の教会堂

 

設計者 ゼール
現在の教会堂の姿を元にした絵です。

現在の教会堂の姿を元にした絵です。

千葉教会の教会堂は、ドイツ人建築士リヒャルト・ゼール(1854~1922)によって設計されたと考えられています。

ゼールは、1875年(明治8年)に来日して、明治新政府の洋風建物の現場監督を行うほか、わが国内のさまざまの建物の設計を手がけました。千葉教会の教会堂は、当時の三田美以(みい)教会(現存しません。)の教会堂のために作られた設計図を、左右反転した形で施工されたものといわれています。完成は1895年(明治28年)です。

なお、ゼールについては、日本建築学会において本教会堂の研究を数多く発表されているzeige6堀内正昭氏、山田利行氏の論文が、国立情報学研究所のデータベースによって公開されています。

 

木造ゴシック様式

Model

右の写真は、建築当初の教会堂の姿を模型にしたものです(現在、この模型は、千葉県中央博物館に所蔵、展示されています。)。

この模型からもわかるように、この教会堂は、尖塔・鐘楼をもって天を高く目指し、縦長の大窓から光を取り入れて天国の明るさを写す、というゴシック様式に従っています。大窓の上部の装飾も、ゴシック様式に特有なものです。

 

hammerbrace

さらに、この教会堂に特徴的なものが、ハンマービーム工法と言われる、木造ゴシック建築ならではの工法です。

この工法は、建物の横幅を広げ、天井を高くするため、建物の両側から内側に向かって梁(はり)を突き出し、その先端部分に束(つか)を立てて天井を支えるとともに、この梁を下からアーチ型の材(ハンマーブレース)で支える、というものです。

上の写真で曲線を描いている部分がハンマーブレースで、これが壁から突き出た角材(梁)を支えています。梁の先端には、上に向かう柱(束)があり、下には飾りが付いています。この梁の長さだけ、室内が広くなっているというわけです。

ハンマービーム工法についての日本建築学会における論文には、たとえばzeige6大橋竜太氏の論文があります。

 

千葉県有形文化財に指定

この教会堂は、竣工16年後の1911年(明治44年)に台風によって尖塔・鐘楼が倒壊し、その後1923年(大正12年)の関東大震災においても壁の一部が剥落する被害に遭いましたが、幸い第二次世界大戦の空襲による被害を免れ、建築後80年が経った1975年に、千葉県有形文化財に指定されました。

2008年(平成20年)には、基礎部分の補強を含めた大改修を行い、鐘楼は欠くものの、建築当時の姿に近いものによみがえりました。

ぜひ一度、実際にお出でいただき、教会堂の姿をご覧ください。

わかりやすいリーフレットも用意して、お待ちしています。なお、案内できる者が不在のときは、ご容赦ください。