神さま、あのね

2011年4月8日(金)
三吉信彦牧師

フィリピの信徒への手紙 4章6~7節

どんなことでも、思い煩うのはやめなさい。何事につけ、感謝を込めて祈りと願いをささげ、求めているものを神に打ち明けなさい。そうすれば、あらゆる人知を超える神の平和が、あなたがたの心と考えとをキリスト・イエスによって守るでしょう。

「かみさま、あのね」という本があります。

『かみさま あのね
すいか ひときれ おおきいまま ほしいの
はんぶんにしたのじゃなく』
ほほえましいですね。小さい子だからって、三日月型のをさらに半分に切って三角にしたものを、お母さんがくれる。ちょっぴりご不満の、女の子の顔が浮かんできます。

「かみさま、あのね」は、子供が「お母さん、あのね」と母親に何でもお話しするように、神さまにそっと呼びかけてお祈りする、そういう幼子のお祈りを集めた絵本です。冒頭の聖句に、「何事につけ、感謝を込めて祈りと願いをささげ、求めているものを神に打ち明けなさい」とあります。「打ち明けなさい」というのは、「知っておいてもらうようにしなさい」という言葉です。子供が母親に、「お母さん、あのね。これ秘密よ。だれにも言っちゃダメよ」と、さも大事な秘密を耳打ちするように、「神さま、知っておいてくださね」と打ち明けることです。神さまは、きっと喜んでその祈りや願いを心に刻みつけておいて下さるでしょう。

アンデルセンの「絵のない絵本」の中にも、こういうのがあります。

お月さまが夜、空から窓をのぞき込んでいますと、小さな女の子がベッドにひざまずいて祈っています。耳をすますと、主の祈りを唱えています。「天にましますわれらの父よ、願わくは・・・日ごとのパンを与えたまえ」と祈って、急に小さな声でいそいで何か付け加えたのをお月さまは聞いてしまいました。
『・・・それに、バターもいっぱいつけてくださいな』

ほほえましいですね。きっと神さまはこの少女の願いをちゃんと心に刻みつけかなえて下さるでしょう。なぜならこの子は「主の祈り」をおざなりではなく、本当に信じて一生懸命祈っているからです。

また、アメリカの小学生が実際に神さまに宛てて書いた「神さまへの手紙」にも、

『かみさま
あなたは きりんを ほんとに あんなふうに つくりたかったの?
それとも あれは なにかの まちがいですか? ノーマ』

何かの間違いですか?はいいですね!ノーマちゃんはきっと、将来、動物学者になるか、自然保護団体のワーカーになるでしょう。子供はこどもなりに不思議な神の創造の世界に、心や目を広げているのです。

主イエスさまは、子供たちのこういう素朴な心を愛されました。
「・・・イエスは乳飲み子たちを呼び寄せて言われた。『・・・はっきり言っておく。子供のように神の国を受け入れる人でなければ、決してそこに入ることはできない。』」(ルカによる福音書 18章16~17節)

幼子はお母さんの胸で安心しきって、すやすや眠ります。そのように、信仰とは神さまに信頼することです。そして、「神さま あのね」と、何でも打ち明ける心のことです。

そして、あの少女がちょっぴり「ジャムもつけてね!」と祈った「主の祈り」は、私たちがお祈りする時のいちばんのお手本です。

天にまします我らの父よ、
ねがわくはみ名をあがめさせたまえ。
み国を来たらせたまえ。
みこころの天になるごとく
地にもなさせたまえ。
我らの日用の糧を、今日も与えたまえ。
我らに罪をおかす者を、我らがゆるすごとく、
我らの罪をもゆるしたまえ。
我らをこころみにあわせず、
悪より救い出したまえ。
国とちからと栄えとは
限りなくなんじのものなればなり。
アーメン。

ここには、あの「日ごとのパン」という私たちの食べるパンから、天と地の広い世界までが祈られています。「主の祈り」は「世界を包む祈り」と言った人がいます。それは、最初に「御国」、つまり神さまの国がこの地上に来ますように、と祈られていること。そしてあとの半分は「我ら」、つまり「私」ひとりではなく「私たち」が祈るかたちになっているからです。

たとえば、「我らの日用の糧を」と祈る時、私のパンだけではなく、世界中の「私たち」の食卓について祈られています。日本の「私たち」は満腹していても、世界の貧しい国の子どもたちが飢えている。ですから、この「パンの祈り」は、世界中の子どもたちに「日ごとのパンを」「今日」という日にも与えて下さいと祈っているのです。

「パンだけじゃなく、バターもいっぱいつけてくださいな」、「すいか ひときれ 大きいまま ほしいの」というほほえましい祈りも、こうして「世界を包む祈り」となり、貧しい子どもたちの食卓が、ちょっぴり豊かなものになるようにと、祈ることになるのです。

「神さま、あのね。あなたがつくったあの不思議なきりんが、いつまでも生きられるように、そしてもっと増えるようにしてほしいの。そのために、神さまの国の平和を、私たちの世界に一日も早く送って下さい。イエスさまのみ名によって。アーメン」

(みよし のぶひこ の祈り)